現場に生きる 現場の胸アツ!ストーリー

全国初の工事に挑む 地中線の技術で新たな領域へ

東海市での地中線工事

胸アツ!メンバー

※取材時の所属・役職を記載しています

  • トーエネック 配電本部
    地中線部 工事グループ
    副長 中口 武
  • トーエネック 名古屋支店
    配電部 地中線グループ
     森 一貴
  • 中部電力(株) 電力ネットワークカンパニー
    配電部 地中配電グループ
    副長 城野 裕隆氏

胸アツ!ストーリー

近年は、都市の景観や防災などの観点から、「無電柱化」に取り組む自治体がある。愛知県東海市にある横須賀町もその一つだ。ただ、この横須賀町の場合は、地中線への切り替えが必要な特別な理由があった。
― 祭り、である。

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尾張横須賀まつりの様子

東海市で開催される「尾張横須賀まつり」は、てっぺんの高さが6mを超える山車を曳く。
大勢の見物客でごった返す中、まかり間違って断線でもすれば、大惨事になりかねない。安全に祭りを行なうためにも、架空線から地中線への切り替え工事が決定した。
ただ、従来の地中化方式は、1 ㎞整備するにつき総工費約5 億円もの費用がかかると言われている。そこで、東海市と中部電力が共同で研究し、比較的低コストで早く埋設できる「小型ボックス」を開発することになった。

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地中化方式による工事の様子

東海市と中部電力、トーエネックの三者による「小型ボックス」の共同研究開発チームが立ち上がる。中部電力からは、城野裕隆がトーエネック地中線部の工事グループ担当課長として出向。設計担当にはトーエネック工事グループ副長の中口武ら、そして施工担当はトーエネックの名古屋支店が受け持つことになった。
当時、小型ボックスの中でも歩道に設置するタイプのものは他の自治体ですでに開発実績があったが、中口らが取り組む車道に設置するタイプのものはまだ世の中に存在していなかった。一般に、車道は歩道とは異なりボックスの上をクルマが通るため、車道設置型ボックスには耐荷重・耐振動性能が求められる。中口らは全国初の試みに挑もうとしていた。
小型ボックスの開発は、トーエネックの倉庫内などで行なわれた。
「この仕事をしている間、寝ても覚めても小型ボックスのことばかり考えていたような気がします。夢に出てくるのは日常茶飯事ですし、眠っていて『ハッ!』と気になったことがあって、次の日急いでボックスを確認したり、最終形に落ち着くまでは、工夫、改良、再考の連続でした」(城野)
こうして完成した「小型ボックス」は、試算によると従来の工法よりも約15%のコストダウンを可能にした。
小型ボックスの開発を振り返って中口は語る。
「私が現場でこだわったのは、楽しんでやることでした。今回のように前例のない開発は大変でしたが、私たちが将来の誰かの前例になれるんだって思ったら、ワクワクして……。途中で行き詰まったときも、私たちがパイオニアになるんだと思ったら、必ずやってやる!という気持ちになれました」(中口)

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地中化方式による工事の様子

着工が始まった。すると、「全国初の車道設置型小型ボックス」ということで、全国から注目を集めた。テレビ局も取材に訪れるほどだった。
「正直、私たちの仕事がこんなに注目されるとは思ってもいなかったので、今後、地中化工事を普及させるためにも、必ず成功させるぞ、と気を引き締めて工事に臨みました」(森)地中化する路線は直線距離で350m前後。2019 年1 月の着工から、道路の掘削と小型ボックスの敷設完了までに約8 カ月かかった。
「中部電力とトーエネックが一丸となって、新しいものを世に送り出すことができたのも、やはり、トーエネックが単なる施工会社としての立場にとどまらず、新しい領域に足を踏み込んで、中部電力が進みたい方向、東海市さんが進みたい方向を束ねていっていただいたことで、全国初の事例に繫がったと思います」(城野)