現場に生きる 現場の胸アツ!ストーリー

電力で「今」を支え「明日」を作る 海外に伝えるジャパン・クオリティ

まだ電気が通っていない地域に明かりを灯す

胸アツ!メンバー

※取材時の所属・役職を記載しています

  • 配電本部 地中線部
    工事課長 中川郁雄

胸アツ!ストーリー

中川郁雄は国際事業統括部のメンバーとして海外で活躍する社員の一人だ。世界には未電化地区が多く残っており、そこに電柱を立て配電線を張ったり地中にケーブルを敷き、電気を送るのである。
最初の赴任地であるカンボジアへ派遣されたのは2013 年8 月。中川は約10 カ月間、現地の業務に従事した。これは、ドイツのODA案件であり、カンボジア国内でまだ電気が通っていない地方への送電プロジェクトであった。日本からはタカオカエンジニアリング株式会社が参画しており、同社が現地の施工業者を使って電柱を立て、配電線を張り、電気を送る工事を行なっており、中川の仕事は、主にその工事の安全・品質・工程管理であった。
日本であれ、カンボジアであれ、目的が同じであれば作業内容自体はそれほどの違いはないはずだった。だが、実際に現地へやって来て、そこで現地の作業員が行なっている工事を目の当たりにしていく中で、中川は日本で自分が常識だと思っていたことが、海外の現場ではまったく通用しないことを、嫌というほど思い知らされることとなった。
現地の作業員に対して安全や品質の指導をする際、彼らは今までと異なるやり方でも、意外と素直に受け入れるケースが多かった。ただし、その場では素直に言われた通りやり直しても、翌日には元に戻っていたりするので油断はできない。
たとえば、現地の作業員たちはヘルメットも着用せず、足元は裸足のままで作業していることが多かった。ヘルメット着用を指示するとすぐに指示に従うのだが、中川がその場を去るとヘルメットを脱いでしまうことも少なくなかった。

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裸足で電柱に昇る現地作業者

また、安全靴については、全員に配布したのだが、確かに受け取ったにもかかわらず、翌日にはまたはだしやサンダル履きで現場にやって来る者も多かった。中川が安全靴のことを尋ねると「なくした」と答える。問いただすと、中には、支給された安全靴を勝手に売り払ってしまったり、後生大事に部屋に飾っている者もいたことを知った。

ほかにもこんなことがあった。停電作業のとき、感電防止のために配電線へ取り付けるアース線の取り付け位置が、指定と違っていたことがあった。アース線を取り付ける位置には安全上の理由があるので、きちんと説明すれば、その場では理解して、正規の位置に付け直してくれる。が、また別の日に別の場所へ行くと、とんでもない位置にアース線が取り付けられている。中川の目から見ると「何でわざわざそんなところに?」と理解に苦しむような位置であったりする。こうした出来事は日常茶飯事である。中川は毎度毎度目につくたびに指導した。
中川のこだわりは、「ジャパン・クオリティ」である。仕事を任されたからには、日本の現場でもっとも大切にしている安全・品質を追求する、国が変わっても大切なものは同じである。
「カンボジアでは限られた工具と、今までの経験だけでやっているわけです。日本で言えば何十年も昔のやり方で。そこに、日本の最新の工具であったり、ルールであったり、考え方であったりということを伝え、それを現地の人が身に付けることで安全と品質の向上に繫がれば、いつかきっとその国のためになると思っています」(中川)
ともあれ―約10 カ月間にわたるカンボジアでの業務を勤め上げ、それから約2 年半後の2016年、次の赴任先であるミャンマーに向かった。
海外での勤務について中川は語る。
「確かに日本と同じように暮らせないのは当然です。だって『異国』なんですから。ある時そんな当たり前のことに気付いたら、現地での不便も不便と思わなくなりました。むしろ旅行と違って、そこで暮らすうちに見えてくるものや感情があります。『日本と違って不便だな』と思うことで、その国の人々の生活が、日本と同じような水準になるために私にできることってないかな、なんて考えながら生活するようにいつしかなっていました」(中川)

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海外の技術者に指導をする中川(写真の場所は、当社教育センター)