現場に生きる 現場の胸アツ!ストーリー

お客さまの「願い」をかなえる技術力 地域・社会と人々の役に立つ研究開発

オール電化給食センターへの挑戦

胸アツ!メンバー

※取材時の所属・役職を記載しています

  • トーエネック 営業本部営業部
    営業第一グループ
    担当課長 福嶋敏勝
  • トーエネック 技術研究開発部
    研究開発グループ
    研究主査 千葉理恵

胸アツ!ストーリー

トーエネックの手掛ける事業は多岐にわたる。その一つが、空調管部門が担っている空調衛生設備工事だ。2013(平成25)年1 月から1 年間、トーエネックは「田原市給食センター」の工事を担った。工事では給食センター内の電気設備工事とともに空調衛生設備工事を行なった。

06田原市給食センター.pdf - Adobe Acrobat Pro DC (32-bit).jpg
田原市給食センター

田原市給食センターは、当時、画期的な給食施設として注目されていた。理由は、給食の生産ラインをすべて電力で稼働させる、オール電化給食センターであったこと。それも、1日9000食分を賄うことが可能な、当時としては、日本最大級のオール電化給食センターだった。
この案件をトーエネックにもたらしたのは、現在、営業本部営業部営業第一グループの担当課長職にある福嶋敏勝である。
当時、田原市では、給食センター施設の老朽化に伴い、建て替えの計画を温めていた。そこで、福嶋は田原市を訪れオール電化の給食センターを提案した。すると、田原市から福嶋に対してこんな問い掛けがあった。
「9000 食規模の給食センターに、実際にオール電化を導入した実績はありますか?」
こういう質問が出てくるということは、相手も興味を抱いてくれている様子だ。
「これだけの規模のオール電化の給食センターは、実績としてはありません。田原市さんに導入いただければ、全国初の事例になります」
「オール電化でも9000 食は十分つくれます」
こういったやり取りを重ねながら、手応えを感じた福嶋は、その後も折に触れて田原市に足を運び提案を続けた。そして、四年たち、長い地道な努力はようやく実を結び、ついに新築する給食センターのオール電化が採用されたのである。
福嶋が提案するオール電化には、省エネルギー効果とランニングコストの削減、さらにセンター内での労働環境が大幅に改善されるといったメリットがあった。そして、これらメリットを実現させたのが、トーエネックが業務用厨房機器メーカーの株式会社AIHOと共同開発した、学校給食センター向け洗浄システム「Eco-Vent ACA」であった。

06田原市給食センター.pdf - Adobe Acrobat Pro DC (32-bit).jpg
Eco-Vent ACA

「Eco-Vent ACA」はどのように開発されたのか。話は2012 年にさかのぼる。当時、開発の中心メンバーだったのは、現在、技術研究開発部の研究開発グループで研究主査を務める千葉理恵であった。千葉の現場でのこだわりを訪ねるとこう返ってきた。
「課題を技術で解決することによって、お客さまが喜び、社会の役に立つような研究開発を行なっていくことです」(千葉)
給食センターの洗浄室が抱えている問題の一つは、洗浄機から出る熱や水蒸気が短時間で室内にこもり、その熱処理ができずに暑熱環境となって、それが原因と思われる体調不良を訴える職員が出ていることであった。洗浄作業が始まると室内は洗浄機から放出される水分と熱で徐々に湿度が高く蒸し暑い状態となり、天井の一部が結露するほどであった。その様子を千葉は振り返る「あの様な過酷な状態で長時間作業することは身体的な負担が大きく、職員の体調に影響するのもうなずけると思いました」(千葉)
ただ、換気や空調処理能力を増強すれば暑熱環境は改善するが、空調の消費エネルギーが増加してしまう。すなわち、省エネルギーとならない。「暑熱環境の改善」と「省エネルギー」、両者をともに実現させるため、既存の洗浄機の改良に向けて、試験を繰り返す日々が始まった。
従来機器は洗浄機内の水蒸気を排気するだけであったところに、「Eco-Vent ACA」は給気を加えエアーカーテンをつくって水蒸気の排出を抑えるようにした。ただ、洗浄機内が冷やされないよう、給気と排気を絶妙なバランスに保つことが、今回の開発でもっとも苦労した点だったという。数々の試行錯誤の末、「Eco-Vent ACA」は作業環境の改善とともに、省エネルギー効果も期待できる製品として完成した。
「この製品を導入することで、給食センターで働く方の作業環境が大幅に改善できる自信がありました」(福嶋)
こうした、福嶋の熱意と千葉の創意工夫が実を結び、新製品「Eco-Vent ACA」は田原市給食センターに導入され、「暑熱環境の改善」と「省エネルギー」を同時にもたらしたのである。