現場に生きる 現場の胸アツ!ストーリー

現場の声に耳を傾ける 研究テーマのヒントはお客さまから

現場に寄り添う研究開発

胸アツ!メンバー

※取材時の所属・役職を記載しています

  • トーエネック 技術研究開発部
    研究開発グループ長 小林浩
  • トーエネック 技術研究開発部
    研究副主査 西戸雄輝

胸アツ!ストーリー

トーエネックはメーカーではないが、社内に専門の研究開発部署を設置し、専任の研究員たちを抱えている。彼らがいるのは、技術研究開発部―。
現在、技術研究開発部で研究開発グループ長を務めるのは工学博士の小林浩。30年近い年月の間に、さまざまな研究に携わってきた。メインの研究テーマは「電力品質」だ。トーエネックという会社にとって、発電所でつくられた電気をエンドユーザーの元へ「いかに品質良く、安定して供給できるか」が永遠の研究テーマになっている。1994(平成6)年、小林は連続多点同時計測システム「高調先生」の研究開発に取り組んだ。当時は全国的に高調波(基本波の整数倍の周波数を持つ正弦波)が問題となっていた。高調波とは電流のひずみで、これが接続機器に悪影響を及ぼす。小林は現場担当者から非常に困っているという声を聞いて、解決したいという気持ちで研究・開発に当たったという。

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「高調先生」開発当時の小林

「高調先生」はひずみ波に含まれる高調波を連続的かつ多点で同時に検出できる測定システムとして、市販された当時は、ちょっとした話題になった。そして、その2 年後には、「高調先生」の後を受けて高調波流出電流計算・対策支援ソフトウエアである「才高調くん」が完成。さらに2 年後の1998(平成10)年には、前作の上位互換である「高調先生(Windows版)」を完成させている。

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高調先生(イメージ)

話しは変わって、2019(令和元)年5 月、東京ビッグサイトで開催された第67 回電設工業展「JECA FAIR 2019」内のイベントである「第58 回製品コンクール」で、トーエネックは見事、環境大臣賞を受賞した。受賞したのは「太陽光発電設備のオンサイトEL測定サービス」。これはEL(Electroluminescence:電界発光)を活用し、太陽光パネルの劣化部分を見つけられるというものである。ELの商品化を長年の研究テーマにしていたのは研究開発グループの研究副主査、西戸雄輝だ。西戸は先述の小林のグループの一員だ。

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太陽光パネルを診断する西戸

従来、太陽光パネルの劣化を測定するには、太陽光パネルを外さなければならず、その分の発電量が減ってしまっていた。西戸は発電が行われない夜間に測定すれば、いちいちパネルを外さなくてもよいことに気付き、EL測定に使われているカメラの改良に着手した。だが、西戸が期待するような鮮明な画像は簡単には撮れず、何度も夜の太陽光発電所へ撮影のために足を運んだ。撮影・確認・調整を繰り返す。そして、とうとう西戸が求める鮮明な画像がカメラのモニターに映し出された時は思わずガッツポーズをしてしまったという。

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EL測定による太陽光パネルの様子(黒い部分が異常個所)

ELの夜間撮影カメラを完成させた西戸が次に取り組んだのは動画撮影だ。
「当社の調査結果によりますと国内にはまだELを動画撮影できるカメラはありません。事業性うんぬんより、誰もやってないなんて聞いたら、研究者として燃えますよ」(西戸)静止画の撮影には難航したが、それを応用した動画の撮影は本人曰く「意外と簡単だった」という。かくしてELの動画撮影ができるカメラは完成した。

小林が研究している「高調波」と西戸が研究している「太陽光」、共通点は何か。小林は次のように語る。
「当社ならではの研究に臨む姿勢、『ヒントや答えは現場にある』という点です。現場でお客さまが望んでいること、当社の現場担当者が困っていること、それらをキャッチして技術的に解決しようとする姿勢が大切です。また、当然、会社に利益をもたらす研究でなくてはならないので、そこを追求しようとするとおのずと足は現場に向かうんですよ。
私の研究は品質の良い電力をお客さまの元に届けること、西戸くんの研究はお客さまの太陽光発電設備がそのポテンシャルを維持し続けられること、両方ともお客さまが求めていることで、そのヒントをくれたのは当社の最前線である現場で働く仲間でした」