おかげさまで80周年
中部電力グループ

平成26~令和6年度

この10年の動き

第1節経営概況

1.当社を取り巻く経営環境

平成26(2014)年4月に消費税が5%から8%に引き上げられたことにより、26年度は駆け込み需要の反動があった。また、第2次安倍政権の打ち出した経済対策「アベノミクス」により、企業の好業績や雇用情勢の改善傾向が見られ、令和元年末まで景気の穏やかな回復基調が続いた。建設業界においては、続く東日本大震災の復興需要のほか、平成25年に東京五輪・パラリンピックの開催が決定した。これらを追い風に大企業の設備投資に改善の動きが見られたものの、労務費の上昇や資材価格の高止まりによって経営環境はなおも厳しい状況であった。しかし、28年度以降は公共投資の底堅い動きによって民間設備投資は持ち直していった。

こうした状況を大きく変えたのが、新型コロナウイルス感染症の流行拡大である。令和2年3月以降に全世界で感染者が急増し、日本でも緊急事態宣言などの発出によって企業活動に大きな影響が生じた。2年に開催が予定されていた東京五輪・パラリンピックは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより1年延期された。当社においても、多数の感染者が発生したものの、現場での徹底した感染予防対策により、工事を止めることなく収支への影響を最小限にとどめた。

5年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、ウィズコロナの時代になって景気は少しずつ持ち直していったが、不安定な国際情勢もあり、先行きは依然見通せない状況であった。建設業界では、首都圏の駅前などで大規模な再開発が相次いだ。平成23年の東日本大震災を契機に防災が見直されたこともあり、戦後復興から高度経済成長期に建設されたビルなど、老朽化した建物の建て替えが進んだ。このように公共投資や民間設備投資の堅調な推移が見込まれる一方で、原材料の高騰やドライバー不足などによるサプライチェーンの混乱といった不安定要素も生まれた。

2.久米雄二社長の就任

平成26(2014)年6月に、中部電力の久米雄二参与が14代目の代表取締役社長に就任した。中部電力では同社常務、専務を歴任し、21から25年度まで電気事業連合会に出向し専務理事を務めていた。

久米社長の就任と同じ年に電力小売りを完全自由化する改正電気事業法が成立し、当社は収益構造の変革を迫られることとなった。これに対応するため、久米社長は後述の旭シンクロテック株式会社の子会社化や太陽光発電事業など事業領域の拡大を進め、一方で作業効率の大幅な向上を図り、より強靭な企業体質を構築すべく尽力した。

久米雄二14代目代表取締役社長
久米雄二14代目代表取締役社長

3.創立70周年記念事業

平成26(2014)年10月1日に創立70周年を迎え、10月2日に記念式典が開催された。

10月3日には五色山大安寺(愛知県日進市)で合同慰霊式を行い、殉職者と業務外で亡くなられた方々に哀悼の意を表した。

10月24日には教育センターで「トーエネックテクニカルフェア2014」を開催した。創立70周年記念事業の一環として、初めて一般の方々にも開放し、社内外から約2,300人が来場した。

そのほか、児童福祉事業に役立ててもらうため、社会福祉法人中日新聞社会事業団に寄付を行った。さらに、地域の自主防犯活動に用いる青色回転灯装備車(青パト)を、岐阜県本巣市、三重県三重郡川越町、大門学区(愛知県岡崎市)、中島学区(愛知県名古屋市)、長野県上田市の5団体に寄贈した。

翌27年3月には、大阪本部が大阪府大阪市淀川区のJR塚本駅前に太陽光発電システム(1.46kW)を寄贈、設置した。

創立70周年記念式典
創立70周年記念式典
合同慰霊式
合同慰霊式
トーエネックテクニカルフェア2014 開会式
トーエネックテクニカルフェア2014 開会式
社会福祉法人中日新聞社会事業団への寄附
社会福祉法人中日新聞社会事業団への寄附
青色回転灯装備車(青パト)の寄贈
青色回転灯装備車(青パト)の寄贈

4.旭シンクロテックを子会社化

平成27(2015)年12月22日、当社は旭シンクロテック株式会社の発行済株式のすべてをフェニックス・キャピタル・パートナーズ・セブンティーン投資事業組合から取得し、子会社化(現・連結子会社)することを発表した。子会社化の時期は28年3月31日とした。

「関東エリアにおける受注拡大」と「製造業からの受注拡大」が子会社化の目的であった。両社の技術力で解決する体制を整え、シナジー効果を生み出すことを期待した。また、材料の共同購入などのコストダウンにより、提案力も強化できるとした。

同社は東京都港区の本社のほか、北海道・東北・東海・四国に営業所を置いており、工場の生産設備における特殊技術を要するプラント配管工事を主力とした。主に紙・パルプ設備事業、環境エネルギー設備事業、産業設備事業などの分野で強みを持ち、ビルなどの空調・給排水・衛生設備工事も行っていた。

なお、旭シンクロテック株式会社の子会社化により、同社の子会社であるPT. ASAHI SYNCHROTECH INDONESIAも連結子会社にしている。

旭シンクロテック株式会社
旭シンクロテック株式会社

5.中期経営計画(平成29~31年度)の策定

平成29(2017)年3月、3カ年にわたる中期経営計画(平成29~31年度)を策定した。当社は「お客さまと新しい未来へ」をスローガンとし、31年度の数値目標(連結)を売上高2,200億円、営業利益90億円(営業利益率4.0%)、ROE5.0%に定めた。また成長への投資として、再生可能エネルギー事業、M&A、研究開発、人材育成の各分野へ、今後3年間で1,000億円を投じることとした。

重点方針として、次の3つを定めた。

  1. 環境変化への対応と成長への挑戦
  2. 当社の更なる成長を目指す

    (1)首都圏における営業活動の強化

    (2)成長分野における事業の拡大

  3. 安定した収益の確保
  4. 当社の経営基盤をより強固にすることを目指す

    (1)電力配電工事業界におけるトップランナーの維持(安全・品質・生産性)

    (2)一般工事における営業基盤の強化とお客さま満足度の向上

    (3)施工能力の強化

    (4)コスト競争力の強化

  5. 企業風土改革の更なる推進
  6. 企業風土改革は道半ばであり、不適切事象の発生防止に向けて継続的に取り組む

    (1)コンプライアンスの徹底

    (2)安全風土と施工品質の維持・向上

    (3)ダイバーシティの推進

「中期経営計画(平成29~31年度)」記者会見
「中期経営計画(平成29~31年度)」記者会見

6.大野智彦社長の就任

平成29(2017)年6月に、中部電力の大野智彦取締役が15代目の代表取締役社長に就任した。中部電力では同社常務、専務を歴任し、23から28年度まで副社長を務めていた。

当時は東京五輪・パラリンピック関連の需要や民間設備投資の増加などの追い風が吹くなか、それをいかに取り込むかが一般工事部門の課題となっていた。また、配電工事部門においては、電力システム改革による影響が続いていた。大野社長は課題に対応するため、さらなる生産性の向上に取り組んだほか、働き方関連法案やダイバーシティの推進に対応する社の在り方の見直しも行った。また、中長期的な成長を実現するために当社の「目指すべき将来像」の検討を進め、中期経営計画2022に反映させた。

大野智彦15代目代表取締役社長
大野智彦15代目代表取締役社長

7.安全創造館が完成

労働災害を未然に防止するため、危険に対する感受性と安全意識の向上を図る教育施設として、安全創造館を平成29(2017)年10月2日にオープンした。

安全創造館には「電柱墜落体感」や「感電体感」など26の危険体感設備と「救命処置体験」など5つの体感設備を用意した。従来の「見る・聞く」を中心とした安全衛生教育に加えて、作業のなかに潜む危険の芽を「体感」することで、安全意識の向上を図る施設となった。当社や協力会社の現場管理・監督者や作業者向けの教育のほか、社外からの受け入れ教育も行うこととした。

同館はオープン以来、作業のなかに潜む危険に対する感受性を高めることを目的として、作業災害の疑似体験による危険体感教育を実施してきたが、令和5年4月、一層の充実を図るべく、既存の危険体感設備である踏み抜き体感設備に「VRシステム」を導入した。踏み抜き体感設備は当社で過去に発生した、工場屋根上での作業中に天窓を踏み抜き落下した災害を再現したものである。仮想現実とも呼ばれる同システムの導入によって、受講者の没入感が高まり、これまで以上にリアリティのある危険体感教育が可能となった。

安全創造館
安全創造館
VRシステム
VRシステム
イメージ
イメージ

8.中期経営計画2022(2020~2022年度)の策定

令和2(2020)年5月、中期経営計画2022(2020~2022年度)を策定した。

当社は「人材投資による さらなる成長」をスローガンとし、2022年度の数値目標(連結)を売上高2,450億円、経常利益120億円、ROE6.5%に定めた。また、中期経営計画2022の策定に合わせて、2年4月に「新人材育成方針」を定めた。

重点方針は以下の4つである。

  1. 事業拡大と基盤強化
  2. (1)営業力の強化

    (2)施工力の向上

    (3)重点事業エリアの強化・拡大

  3. 収益力向上に向けた競争力の強化
  4. (1)効率化・生産性向上の取り組み強化

    (2)コスト競争力の強化

    (3)技術力の強化

    (4)全社視点でのシステム開発の推進

  5. 人材の育成強化
  6. (1)新人材育成方針にもとづく育成強化と教育の充実

    (2)働きがいのある職場づくり

  7. 企業風土改革の推進
  8. (1)安全風土の確立

    (2)働き方改革の推進

    (3)コンプライアンスの徹底

    (4)ダイバーシティの推進

「中期経営計画2022」記者会見
「中期経営計画2022」記者会見

9.藤田祐三社長の就任

令和3(2021)年4月に、藤田祐三副社長が16代目の代表取締役社長に就任した。中部電力では執行役員、常務を歴任し、平成30年に専務として当社へ入社後、令和2年より副社長を務めていた。

折しも新型コロナウイルス感染症の世界的流行の最中に就任した藤田社長は、社会インフラ維持と従業員の健康の両立など、難しい対応を迫られた。また、持続可能な社会を実現しようと世の中の価値観が変化するなか、求められる企業責任を果たすため、長期ビジョンや「中期経営計画2027」を策定して当社の方針、行動基準の整備を行った。加えて、従業員全員で目標を共有し、一歩踏み出せるように、当社のお役立ちをより多くの方々に知っていただけるように、トーエネックの使命(パーパス)を策定した。

藤田祐三16代目代表取締役社長
藤田祐三16代目代表取締役社長
藤田社長就任時の記者会見 藤田社長(左)と大野前社長(右)
藤田社長就任時の記者会見 藤田社長(左)と大野前社長(右)

10.監査等委員会設置会社へ移行

令和3(2021)年6月25日に開催された第103回定時株主総会で、当社は従来の監査役設置会社から監査等委員会設置会社に移行することを決定した。当社グループを取り巻く事業環境が大きく変化するなかで、当社はコーポレートガバナンスの強化に取り組んできたが、さらなる企業価値の向上を図るための決断であった。

議決権を有する独立社外取締役を増員して取締役会の監督機能を強化し、一方で、取締役会から取締役への権限移譲によって迅速な意思決定を行い、取締役会をより充実した議論を行う場にすることが目的であった。

また、取締役の中に「監査等委員である取締役」を置くこととし、従来の監査役に相当する業務を担わせ、監査役を廃止した。

11.ビジョン(目指すべき将来像)と中期経営計画2027(2023~2027年度)の策定

令和5(2023)年4月に新たな中期経営計画となる中期経営計画2027(2023~2027年度)を策定した。従来の中期経営計画の期間は3年間であったが、施策が実を結ぶには時間を要すると判断し、5年間とした。

この中期経営計画の策定に合わせ「お客さまと、社会と、人と、共に成長し続ける総合設備企業へ」をビジョン(目指すべき将来像)として掲げました。その実現に向け、中期経営計画2027では今後5年間に取り組むべき施策を4つの基本方針(1成長分野への挑戦、2既存事業の深化、3人材投資の更なる拡充、4経営基盤の強化)として定め、9年度の数値目標(連結)を売上高2,700億円、経常利益180億円、ROE8.0%とした。

  1. 成長分野への挑戦
  2. 成長が見込まれる分野(カーボンニュートラル、再生可能エネルギー、DX関連)やエリア(首都圏、近畿圏、アジアなど)における事業強化を図る。また、多様化するお客さまのニーズを捉えた新規事業の創出・展開に取り組んでいく。

  3. 既存事業の深化
  4. 地盤となる中部圏での競争力を更に高める総合体制やバリューチェーンの強化、協力会社を含めた技術力確保に注力することで、ワンストップサービスなど総合設備企業の中核的な強みを磨き、事業基盤を盤石なものとする。

  5. 人材投資の更なる拡充
  6. 人材投資を更に加速することで人材の質と量の充実を図る。また従業員一人ひとりが持つ多様な力を最大限引き出し、結集させるための取り組みを推進する。

  7. 経営基盤の強化
  8. 継続的に取り組むべき安全・品質の向上に加え、健全で公正な企業経営を実践するための風土改革・施策を推進し経営の土台であるステークホルダーとの信頼関係を強化する。

12.藤田祐三会長・滝本嗣久社長の就任

令和6(2024)年4月、藤田祐三社長が代表取締役会長に、滝本嗣久副社長が17代目の代表取締役社長に就任した。滝本社長は東海電気工事時代の昭和61年に当社へ入社し、地中線工事部門の業務に長年にわたり従事してきた。平成22年に配電本部地中線部副部長として地中線部門を全体統括し、静岡支店長、東京本部長を経て、令和4年に副社長として、経営効率化や受注拡大に向けて経営に携わってきた。

滝本社長は就任挨拶において、「現場目線を反映していかなければ私が社長を務める意味はない」とし、ボトムアップ文化の向上に取り組み、当社の持続的な成長につなげていきたい考えを示した。

滝本嗣久17代目代表取締役社長
滝本嗣久17代目代表取締役社長
滝本社長就任時の記者会見 藤田会長(左)と滝本社長(右)
滝本社長就任時の記者会見 藤田会長(左)と滝本社長(右)

13.パーパス・バリューの策定

令和6(2024)年3月、当社の「使命(パーパス)」とそれを果たし続けるために「大切にすべきこと(バリュー)」を策定するとともに、理念体系を整理した。「使命」や「大切にすべきこと」は、創立時から受け継がれてきた精神や姿勢を改めて言葉にしたものである。言語化にあたっては、働く仲間の想いを探るため、国内の全事業場にてディスカッションを開催し、仕事に対するやりがいや当社の存在意義について意見交換を行った。本店や支店方面本部にて実施した座談会およびワークショップを含めると、延べ1,224人の役員・従業員が言語化の作業に参加した。

【使命(パーパス)】

いかなる時も、人や社会に“活力と豊かさ”を生み出す快適環境を創り、守る

【大切にすべきこと(バリュー)】

  • 技術の追求|時代と共に変化するお客さまや社会のニーズに応えるため技術の習得と研鑽に努める。
  • チームワーク|仲間と力を合わせることで、総合力を発揮する。
  • 仕事への情熱|情熱をもって仕事に取り組み、失敗を恐れず果敢に挑戦する。
  • 誠実さ|常に誠実な行動(法令や社会規範を遵守する。人を思いやる。)をとることで、安全と品質を守るとともに、ステークホルダーとの信頼関係を高める。

14.組織の改定と整備

平成27年7月の組織改定

平成27(2015)年に行った組織改定では、28年4月の電力自由化に伴う電力市場の競争激化を予想し、海外で当社保有の配電技術を活かした事業(直受)を積極的に推進するために、経営企画室内に「海外電力インフラ部」を新設した。

平成28年7月の組織改定

平成28(2016)年に行った組織改定では経営の監督を担う取締役会機能と、業務執行を担う経営会議機能の分離をより明確にするため会議体の名称を「経営会議」から「経営執行会議」に変更した。

また、個別の重要な営業活動案件について、方針・方向性を協議し、意思決定の迅速化を図るため「営業会議」を新設した。

本店においては、本店部を統括する「統括」を新たに設置した。また、情報通信本部を廃止して、本店直轄の「情報通信統括部」を設置した。

28年2月末の旭シンクロテック株式会社の子会社化に伴い、社内体制の強化と収益力向上を図るため、営業本部から「空調管本部」を独立して設置し、受注拡大に向けて設計機能を強化するために「設計部」を新設した。

また、本店直轄の営業部門、空調管部門、情報通信部門の現業部署を束ねる組織として「中部本部」を新設した。

平成29年4月の組織改定

平成29(2017)年3月28日に政府が決定した「働き方改革実行計画」を受けて、推進策を審議・調整するために「働き方改革推進委員会」を設置し、委員長は社長とした。同委員会は、効率的な働き方を推進して、生産性の向上と長時間労働・休日労働を削減し、従業員一人ひとりが生き生きと活躍できる企業風土を作ることを目的とした。

平成30年4月の組織改定

平成30(2018)年4月、海外事業を一体的に運営・管理するための改組に伴い「海外事業部」を「国際事業統括部」へ改称した。

令和3年6月の組織改定

令和3(2021)年6月、監査等委員会設置会社へ移行したことに伴い、「監査役会」「監査役室」を廃止し、「監査等委員会」「監査等委員会室」を新設した。

令和4年4月の組織改定

令和4(2022)年4月、安全と品質を一体的に統括し、これまで以上に安全・品質に関する施策を迅速に展開するため「安全環境部」を「安全品質環境部」に改称し、社長直轄とした。

令和4年10月の組織改定

令和4(2022)年10月、経営企画部の業務改革グループを再編し、業務のDXを推進する「DX推進グループ」と生産性向上を専門的に実施する「かいぜん推進グループ」を設置した。