平成26~令和6年度
この10年の動き

第2節サスティナビリティ(環境、社会、カバナンス)への取り組み
1.環境(Environment)
グリーンボンドの発行
平成31(2019)年3月、日本国内市場において「株式会社トーエネック第3回無担保社債(適格機関投資家限定)(グリーンボンド)」を発行した。
グリーンボンドとは、地球温暖化対策や再生可能エネルギーなど環境に配慮した事業に使途を限定し発行する債券である。国内の電気工事会社におけるグリーンボンド発行は当社が初の事例であった。
発行額は140億円、発行年限は10年、利率0.40%、資金使途は太陽光発電事業とした。
トーエネックグループ環境基本方針の改定
令和3(2021)年10月1日、「トーエネックグループ環境基本方針」を改定した。改定は、環境保全活動をさらに推進するため、また、脱炭素社会の実現に向け、ゼロエミッションに取り組むために行われた。
なかでもゼロエミッションへの取り組みについては、車両の電動化や、事業場の更新時における太陽光発電設備の設置などにより、12年までに売上高あたりのCO₂排出量を平成25年度比で46%以上削減することとした。また、令和32年までにCO₂排出量ネットゼロ(CO₂を吸収量や除去量と合わせて、全体で正味ゼロとすること)を実現することを目標に掲げた。
トーエネックグループ環境基本方針は「中部電力グループ環境基本方針」に基づき、以下4点を示した。
トーエネックグループは、電力供給、電気、空調管、情報通信設備工事を主体とする総合設備業として、地球環境の保全に努め、持続的成長を目指していきます。この実現に向けて、社員一人ひとりが自らを律して行動し、社会の発展に貢献します。
- 脱炭素社会の実現をめざします ~「ゼロエミッション」の達成をめざして~
- 自然との共生に努めます
- 循環型社会の実現をめざします
- 環境意識の向上に努めます
地球温暖化防止(CO₂削減策)を推進し、事業活動を通じて脱炭素化をめざします。
お客さまや社会のニーズにお応えできる脱炭素社会に向けたソリューションを提案します。
豊かな自然環境を守るため、多様な生物の生態系や水資源の持続可能性に配慮して事業活動を行い、環境汚染の予防に努めます。
資源の消費抑制を図るとともに、廃棄物の発生抑制や資源の再利用・リサイクルにより処分量の最小化に努めます。
環境とエネルギーに関して、地域社会の皆さまとのコミュニケーションを深めます。
環境に配慮した行動が自発的にできる人材を育成し、社会に貢献します。
TCFD提言への賛同と情報開示
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)とは、G20の財務大臣および中央銀行総裁からの要請を受けた金融安定理事会によって、平成27(2015)年に設立された作業部会である。
令和4年4月、当社グループはTCFDによる提言に賛同することを決定した。以降、当社はTCFD提言に基づき、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの視点から、気候関連財務情報を開示していくこととした。
2.社会(Society)
安全・品質・衛生活動
新型のファン付き作業服を開発・配備
酷暑期における作業現場の環境改善策の一環として、株式会社空調服と共同で、作業服に小型電動ファンを取り付けた新型ファン付き作業服を開発し、平成29(2017)年6月から現場作業者全員に順次配備した。ファン付き作業服とは、取り付けた小型ファンで外気を取り入れて汗を気化させ、体温を下げる構造の作業服である。
27年から汎用品のファン付き作業服を採用していたが、当社の作業に合わせた検証や見直しを重ねて新型は完成した。
配電部門では、27年6月から空調服と合わせて通気性向上ヘルメットを試験的に配備し、9月までの約3カ月間にわたって現場での効果を確認した。その後、令和2年度からフルハーネス型墜落制止用器具を全社一斉配備したことに伴い、空調服の仕様を再度変更した。フルハーネス型墜落制止用器具を装着した状態でも風が通ることなど細かい改良を加えた。



安全健康方針・行動基準、品質方針・行動基準の制定
令和4(2022)年4月1日、「安全衛生方針」から「安全健康方針」に見直し、「品質方針」を制定した。また、それぞれ従業員等の行動のよりどころとする「行動基準」を制定した。
【安全健康方針・行動基準】
安全健康方針
株式会社トーエネックは、安全健康方針を以下のとおり定めます。
共に働く仲間がいきいきと、充実した生活を送ることができるように、安全と健康の確保を経営の最重要事項に位置付け、「労働災害の根絶・心とからだの健康保持増進・働きやすい職場環境づくり」に取り組みます。
この安全健康方針に沿って、持続的な安全健康活動を展開していきます。また、そのために必要な経営資源を投入します。
安全健康行動基準
全ての役員・従業員は、「自分のため、家族のため、共に働く仲間のため」に次のとおり行動します。また、その行動を互いに尊重し、対話と協調により安全と健康への意識を高めます。
(1)安全と健康を最優先します。
(2)ルールを理解し、必ず守ります。
(3)安全と健康の確保に向け、自らが考え、行動します。
(4)仲間の不安全行動や不調のサインを見逃しません。
(5)リスクの洗い出しを行い、災害の未然防止を図ります。
(6)問題の原因を追究し、対策を充実させます。
【品質方針・行動基準】
品質方針
株式会社トーエネックは、品質方針を以下のとおり定めます。
お客さまのニーズに応える技術やサービスを提供し、快適環境づくりを通じて社会に貢献します。
この品質方針に沿って、品質目標を設定し評価と改善を継続していきます。また、そのために必要な経営資源を投入します。
品質行動基準
全ての役員・従業員は、いかなる場合も次のとおり行動し、お客さまからの信用と信頼を得ることに努めます。
(1)法令を遵守し、お客さまニーズに応えます。
(2)技術・技能のレベルアップに努めます。
(3)施工品質・サービスの向上に努めます。
(4)社会のニーズを先取りした技術の研究・開発に努めます。
(5)事業パートナーとの連携を強化します。
健康経営優良法人2024の認定
令和6(2024)年3月11日、当社は経済産業省・日本健康会議が主催する「健康経営優良法人認定制度」において、優良な健康経営を実践している企業として「健康経営優良法人2024」の大規模法人部門に初めて認定された。
健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みを基に、特に優良な健康経営を実践している法人を顕彰する制度である。
かいぜん・DX
トヨタ生産方式によるかいぜんの導入・全社かいぜん活動発表会の開催
平成28(2016)年、さらなる生産性向上を目指し、配電部門において「トヨタ生産方式」を導入することとした。トヨタ生産方式とは、トヨタ自動車株式会社が行う「ジャストインタイム」「視える化」などにより、無駄を徹底的に排除する手法である。試験的に豊橋北営業所で導入し、実施期間は28年3月から約6カ月間とし、2~3%の作業効率向上を目指した。
30年に配電部門でトヨタ生産方式によるかいぜんを導入したのを皮切りに、各部門で順次効率化、生産性向上の取り組みを行ってきた。令和2年からは「かいぜん活動」として全社的に展開することとした。
同年11月、「第1回全社かいぜん活動発表会」を本店本館で開催した。以降、年1回開催し、5年度までに計4回開催した。

DXの推進
当社は中期経営計画2027において、デジタル化・DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を当社の成長を加速させる3つのドライバーの一つとして掲げた。同計画の施策を遂行するため、令和5(2023)年4月には「DX推進基本方針・基本計画」を策定した。また、DX推進委員会やDX推進者研修、DX人材研修、管理者研修など、ディスカッションや各種研修を開始した。
さらに、DX推進を着実に進めるため、同年10月、全社にスマートフォンを配備し、情報共有、情報伝達の強化を図りつつ、6年3月には建物間の内線電話を廃止してスマートフォンの使用に切り替えた。同年4月には経費精算パッケージの導入など、業務の効率化に向けた取り組みを開始するとともに現場でのスマートフォンの活用も模索した。その他、社内外の課題解決に向けたDXプロジェクトを複数立ち上げた。

人材育成・教育・福利厚生
女性の活躍推進企業に認定
当社は、名古屋市より平成28(2016)年度「女性の活躍推進企業」の認定を受けた。
名古屋市が21年から実施しているこの制度は、女性がいきいきと活躍できる取り組みを行っている企業を認定するものである。
当社ではダイバーシティ推進に向けてさまざまな取り組みを進めているが、そのなかで女性の職域拡大や管理職登用などにも力を入れてきた。また、働く環境の向上に取り組んでいることなども評価された。

ワーク・ライフ・バランス推進企業に認証
平成30(2018)年7月に、名古屋市より「ワーク・ライフ・バランス推進企業」の認証を受けた。

技能五輪全国大会の電工職種で日本一
教育センターでは技能五輪の選手の育成を行っており、これまでの全国大会において好成績を収めている。
平成30(2018)年11月2日~5日にかけて沖縄県で開催された第56回技能五輪全国大会(中央職業能力開発協会など主催)には、当社従業員6人が電工職種で出場した。その結果、愛知県代表で出場した清水貴央選手が第1位である金賞を受賞し、長野県代表と愛知県代表の2選手が敢闘賞に選ばれた。当社従業員が金賞に輝くのは9年ぶりであった。
また、清水選手は令和元年8月の第45回技能五輪国際大会の出場権を得ることとなった。当社従業員の国際大会出場は、平成5年に台湾で開催された第32回大会以来の快挙であった。
令和元年8月22日~27日、ロシア連邦のカザンで第45回技能五輪国際大会が開催された。電工職種は4日間の日程で40カ国40人の出場者で競い、清水選手は6位の敢闘賞を受賞した。


ダイバーシティ2022、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン2027の策定
令和2(2020)年5月に策定した中期経営計画2022の重点方針に基づき、同年8月に「ダイバーシティ2022」を策定した。
これはダイバーシティ推進に関する2~4年度の目標や主な取り組みをまとめたものである。厚生労働省管轄の「えるぼし」や「くるみん」の認定基準に達するため、目標を「国の認定基準への到達」とした。また、女性管理職や女性現場担当者、男性育休取得者、テレワークなどを“アタリマエ”として受け入れ、浸透させるため、社内教育や関係情報の発信をしていくこととした。
5年度には新たに「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)2027」を策定し、社内外へ公表した。
DE&I 2027では「個々の多様性を受け入れ、認め合い、共に活躍・成長できる職場環境づくり」を目指し、能力開発の機会の提供、個の力を発揮できる企業風土の醸成、人事制度の整備に取り組むこととした。

愛知県ファミリー・フレンドリー企業賞を受賞
当社は、令和3(2021)年2月15日、「愛知県ファミリー・フレンドリー企業賞」を受賞した。
愛知県では、働きやすい職場環境づくりに積極的に取り組む企業を「愛知県ファミリー・フレンドリー企業」として登録している。当社はそのなかでも優れた取り組みを推進し、成果を挙げている企業に贈られる賞を受賞した。

メンター制度を採り入れた女性従業員の活躍推進活動をスタート
当社ではダイバーシティ推進に向けた施策の一つとして、女性従業員の活躍推進に向けた取り組みに力を入れてきた。その一環として、令和3(2021)年に「メンター制度」による女性従業員の支援活動を開始した。
この取り組みは、全社の女性従業員からメンター(先輩)とメンティ(後輩)を人選し、両者がペアとなって定期的にメンタリング(面談)を行うものである。メンタリングでは、仕事に関する内容を中心に意見を交わし、信頼関係を築きながら両者の成長を目指した。

トーエネックいきいきファーム開園
障がい者が活躍できる場所の提供と職域拡大の取り組みとして、令和4(2022)年5月に「トーエネックいきいきファーム」を開園した。農園では障がい者スタッフが電照・水耕により野菜を栽培しており、収穫した野菜は社員食堂で使用するなど、当社の福利厚生の一環として活用するとともに、社会貢献のため社外の施設に寄付している。
あいち女性の活躍プロモーションリーダーの受嘱
令和4(2022)年7月、当社は愛知県から「あいち女性の活躍プロモーションリーダー」の委嘱を受けた。
愛知県では「女性が元気に働き続けられる愛知」の実現に向け、平成25年度より「あいち女性の活躍促進プロジェクト」を進めている。あいち女性の活躍プロモーションリーダーは同プロジェクトの一環として「あいち女性輝きカンパニー(女性の活躍に向けて採用拡大や人材育成、環境づくりなどを行っている企業を認証する制度)」に認証されている企業に取り組みを委嘱し、女性の活躍促進を働きかけていくものであった。

あいち女性輝きカンパニー優良企業で表彰
令和4(2022)年11月11日、当社は愛知県からあいち女性輝きカンパニー優良企業の表彰を受けた。
これは、あいち女性輝きカンパニーに認証されている企業のなかから、特に優秀な企業に贈られるものである。女性メンターの活躍や女性技術者の職場環境向上など、当社の取り組みが高く評価された。

子育て支援企業で優秀賞を受賞
名古屋市の「子育て支援企業認定・表彰制度」において、当社は令和4(2022)年度の優秀賞に選ばれ、5年1月27日に表彰式が開催された。
この制度は子育てにやさしい活動を行っている企業を名古屋市が認定するものである。同賞の受賞は、当社が取り組んできた妊娠前からの長期間にわたる仕事と育児の両立支援が評価された結果であった。

トーエネックグループ人材戦略方針の制定
中期経営計画2027の基本方針の一つに「人材投資の更なる拡充」を掲げ、令和5(2023)年3月に、「トーエネックグループ人材戦略方針」を以下のように策定した。
少子高齢化の進展や新しい働き方などの事業環境の急激な変化や将来の不確実性の高まりを受け、企業価値決定の資産の中核は「人材」に移行してきたことや、従業員一人ひとりが持つ技術やスキルを会社の資産と捉え、個々の潜在力を見出し、活かし、育成することで中長期的な企業価値向上につなげる経営=人的資本経営を推進することとした。
同方針に基づき、人材投資をさらに加速させ、人材の質と量の充実を図ること、および従業員一人ひとりが持つ多様な力を最大限引き出し、結集させるための取り組みを推進することとした。
また、多様な人材がいきいきと働けるように、従業員エンゲージメントを高める施策を積極的に推進していくことなども盛り込んだ。
トーエネックグループ人材戦略方針
当社の原動力であり、成長の源泉は人材です。
社会に安心とやさしい環境をお届けするために、人材の投資を更に拡充し、人材の質と量の充実を図っていきます。
また、多様な人材が、健康で安全にいきいきと働けるよう従業員エンゲージメントを高める施策を積極的に推進していきます。こうした取り組みを通して、当社で働く一人ひとりが仕事に誇りと喜びを感じ、社会から必要とされる技術者集団でありたいと考えます。

人事制度の改定(定年の引き上げおよび再雇用制度の改定)
従業員が安心して長く活躍できる環境づくりならびに知識や経験が豊富な人材の安定確保を目的として、令和5(2023)年4月1日から、定年年齢をこれまでの「60歳」から「65歳」へ引き上げ、併せて70歳までの継続再雇用制度を導入した。
制度の導入時には定年年齢変更に伴う緩和措置として、60歳以降は本人の意志により定年年齢を選択できる「希望定年制度」を新設することで、各人の状況に合わせた選択を行うことができるよう配慮した。
トーエネックグループ人権基本方針の策定
中部電力グループCSR宣言に基づき、令和5(2023)年11月1日、「トーエネックグループ人権基本方針」を策定した。
これは、企業の人権尊重の取り組みに対する要請の高まりを受け、当社も事業活動に関わる方々の人権を尊重し、社会的責任を果たすことを表明すべく、同方針を策定したものである。
企業が持続可能な経営を志向するうえでは、人や社会などから選ばれる企業となることが重要であり、当社も社会を構成する一員として人権を理解し、日々の業務運営の中でグループ内外の人権を守りながら、グループの企業価値向上を目指すこととした。
- 人権の尊重
- 運用範囲
- 具体的な人権課題へのコミットメント
- 人権デュー・ディリジェンスの実施
- 救済と是正
- 対話と協議
- 教育と研修の実施
- 情報開示
事業活動に関わる全ての方々の人権を尊重します。
また、人権侵害に加担しません。
トーエネックグループは、事業活動を行う国や地域で適用される法令を遵守します。
万一、各国や地域の法令と国際的な規範・原則との間に差異や矛盾がある場合は、国際的な人権の規範・原則を尊重する方法を追求します。
本方針は、トーエネックおよび連結子会社のすべての役員および従業員に適用します。
また、上記のサプライヤーを含むすべてのビジネスパートナーの皆さまにも、本方針への理解・協力を求めるとともに、本方針が尊重されるよう、継続的に働きかけます。
トーエネックグループは、事業活動におけるあらゆる機会において、人権に関する国際的な規範・原則に則り、以下の権利と尊厳を尊重します。
(1)人種、国籍、出身地、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、社会的身分、門地、障がいによるあらゆる形態の差別を行いません
(2)パワーハラスメント・セクシュアルハラスメント・マタニティハラスメントをはじめとするあらゆる形態のハラスメントを行いません
(3)結社の自由と団体交渉権を尊重します
(4)ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進します
(5)人身取引、強制労働および児童労働は、いかなる形態であるかを問わず行いません
(6)最低賃金の確保と生活賃金を支持します
(7)労働時間を適正に管理し、過剰な労働時間を削減します
(8)健康かつ安全な職場・作業環境を確保します
(9)個人情報およびプライバシーを保護します
(10)地域社会の環境保護に努めます
事業活動が及ぼす人権への負の影響を特定・評価し、そのリスクを防止または軽減するために、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、継続的に実施します。
トーエネックグループは、人権に係る問題に適切に対応するため、通報窓口を社内外に設けます。
通報窓口は、トーエネックグループの役員および従業員だけではなく、サプライヤーを含むビジネスパートナー、地域コミュニティの皆さまを含むあらゆるステークホルダーも利用可能とします。
通報においては、通報者の匿名性や、通報内容の秘密を守ることはもちろん、通報者に対する不利益な取り扱いや報復措置を禁止し、通報者の保護を徹底します。
トーエネックグループの事業活動が、人権に対する負の影響を引き起こしたり、あるいは助長したりすることが明らかになった場合、適切な手続き・対話を通じてその救済と是正に取り組みます。
人権に対する実際の影響あるいは潜在的な影響への対処について、関連するステークホルダーと対話や協議を行っていきます。
人権に関して正しい理解と認識を深めるため、教育・研修を計画的かつ継続的に実施します。
トーエネックグループは、本方針に基づく取り組みについて定期的に情報開示します。
大規模災害の復旧対応
台風21号・24号の災害復旧
平成30(2018)年9月、台風21号、24号が相次いで日本列島を襲い、大きな被害を出した。当社では、全社を挙げてライフラインの復旧にあたった。21号、24号合わせて、配電部門は延べ1万7,642人、情報通信部門は延べ987人、営業部門は延べ57人を動員した。
・台風21号
9月4日の正午頃に四国地方・近畿地方を縦断した強い台風21号においては、中部電力管内でも大規模な停電が発生した。当社は翌日から災害復旧体制を敷き、配電部門は名古屋・岡崎・静岡・三重・岐阜・長野の各支店、営業部門と情報通信部門も東海エリアおよび関西エリアで復旧作業にあたった。
・台風24号
9月30日の夜中に和歌山県から東海・北陸・東北へ向かって日本列島を縦断した台風24号においても、中部電力管内で大規模な停電が発生した。当社は10月2日から災害復旧体制を敷き、配電部門は名古屋・岡崎・静岡・三重・岐阜・長野の各支店、営業部門は関東・東海・関西の各エリア、情報通信部門は東海エリアで復旧作業にあたった。


千曲川堤防決壊による変電所内配電設備復旧
令和元(2019)年10月12日、伊豆半島に上陸した台風19号は、各地で記録的な大雨を観測し、死者が100人を超えるなど甚大な被害をもたらした。
当社の営業エリアにおいては長野支店管内の被害が大きかった。千曲川の堤防が決壊して濁流が市街地へ流れ込み、変電所の水没や配電線の断線、電柱の倒壊など災害が多発した。また、軽井沢近辺の山間部では倒木による断線などが起こった。中部電力管内では、配電施設だけでなく通信設備も被害を受け、延べ14万戸が停電した。
当社では10月12日~21日にかけて各部門が長野県・静岡県・関東で復旧作業にあたった。地中線部門では水没した変電所の復旧などを行い、泥の溜まった現場で懸命に作業を続けた。

能登半島地震復旧
令和6(2024)年1月1日16時10分、最大震度7の能登半島地震が発生し、津波や家屋倒壊、地盤隆起など、大きな被害が出た。
配電部門では1月4日~29日にかけ、本店・名古屋・岡崎・静岡・三重・岐阜・長野の各管内で協力会社を含め延べ3,925人を動員して、ライフラインの復旧作業にあたった。
情報通信部門では1月2日~2月13日にかけ、中部・東京・大阪の各管内で協力会社を含め延べ1,432人を動員して、通信インフラの復旧作業にあたった。


3.ガバナンス(Governance)
ステークホルダーとの信頼関係強化
平成28(2016)年4月の取締役会において、配当方針の変更を決議した。持続的な成長のための内部留保と株主に対する利益還元をバランスよく行う目的で、28年3月31日を基準日とする剰余金の配当から、連結配当性向30%の目標値を設定し、業績に応じた利益還元を行うことで、株主への利益還元の姿勢をより明確にすることとした。
また、全国の証券取引所では投資家の利便性を向上しようと、30年10月1日までにすべての国内上場会社の普通株式の売買単位を100株に統一することを目指していた。また、個人投資家が投資しやすい環境を整備するため、望ましい投資単位として「5万円以上50万円未満」という水準を明示していた。当社も東京証券取引所および名古屋証券取引所に上場している企業として、この趣旨を尊重し、当社株式の売買単位を100株に変更した。単元株式数を1,000株から100株に変更することに伴って所有株式数5株につき1株の割合で併合した。これにより、併合前の発行済株式総数は9,664万9,954株であったが、併合後の発行済株式総数は1,932万9,990株となった。
その後、東証市場第一部に上場していた当社は、東証の市場区分が再編されるのに際し、令和3年11月25日、新市場区分における最上位のプライム市場を選択し、4年4月に移行した。また、名証市場第一部から名証プレミア市場に移行している。
5年9月21日には、ステークホルダーとの対話をより一層深めるきっかけとなるよう、当社ホームページのIR情報において「トーエネックグループ統合報告書2023」を公開した。
6年1月31日の取締役会において、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を協議の上、決議した。事業活動においては各事業の収益性や成長性を確認し、経営資源を重点事業へ集中的に投下することで資本コストを上回る価値の創出を目指すこと、資本政策においては財務の健全性を確保しつつ、資本効率の向上を図るため、非事業性資産の縮減や株価を意識した株主還元の強化に取り組むこととした。
また、上述の対応方針に基づき株主還元の強化をより明確にするため、同取締役会において配当方針の見直しについても決議し、連結配当性向30%以上の業績に応じた利益還元を行うこととした。
6年5月30日の取締役会において、投資単位当たりの金額を引き下げ、株式の流動性を高めることで、投資家がより投資しやすい環境を整えるとともに、投資家層の拡大を図るため、株式分割およびそれに伴う定款の一部変更について決議した。株式分割については6年9月30日を基準日として同日最終の株式名簿に記録された株主の所有する普通株式1株につき5株の割合をもって分割することとした。これにより、分割前の発行済株式総数は1,932万9,990株であったが、分割後の発行済株式総数は9,664万9,950株となった。また、本株式分割に伴い、当社定款に定められた発行可能株式総数を、効力発生日である6年10月1日に4,000万株から2億株に変更した。

お取引先との共存共栄に向けた取り組み
令和5(2023)年3月に中小企業庁が実施した価格交渉促進月間フォローアップ調査において、お取引先から非常に厳しい評価を受けることとなった。
この評価を受け、当社はお取引先との共存共栄の関係構築に向けた取り組みを早急に推進することとし、同年8月に共存共栄プロジェクトを立ち上げた。併せて、法務部はお取引先からの要望や相談に対応する「お取引価格に関する相談窓口」を設置した。
その後、同プロジェクトでは、取引に関する各部門のルールや取引実態について調査を行い、改善策を検討した。その結果、具体的な改善策として、トーエネックグループ調達基本方針の策定や取引価格等、取引に関してお取引先の皆さまと対話を行うコミュニケーション推進月間(9月)の設定、下請中小企業振興法の振興基準や公正取引委員会の「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」に基づく業務プロセスの整備を行った。
トーエネックグループ調達基本方針
- パートナーシップ
- 公平・公正な調達
- コンプライアンスの徹底
- 安全確保
- 環境負荷の軽減
- オープン・ドア・ポリシー
- 機密の保持
(1)お取引先の皆さまを、相互発展を目指す大切なパートナーと考えています。
(2)パートナーである皆さまとのコミュニケーションや公平・公正な取引を通じて、より確かな信頼関係の醸成に努めるとともに、共同して社会の持続的発展に貢献していきたいと考えています。
資機材等の調達にあたっては、その価格、品質、性能、安全性、納期・工期の確実性およびアフターサービスに加え、お取引先の技術力、生産能力、経営状態、安全管理体制、企業の社会的責任(CSR)への取組姿勢などを総合的に勘案し、経済的合理性に基づいて公平・公正におこないます。
(1)法令、ルールおよび企業倫理を遵守し、業務を遂行します。
(2)人権尊重(児童労働・強制労働の禁止、不当な差別の排除などを含みます)、知的財産権の保護などにも十分配慮します。
「安全はすべてに優先する」の考えに基づき、労働災害の防止と公衆保安・衛生の確保に努めます。
お取引先の皆さまとの協力関係のもと、グリーン調達をはじめ環境負荷の軽減をはかり循環型社会の形成、確立に貢献します。
国内の企業はもとより、広く海外の企業ともオープン・ドア・ポリシーに基づいて、取引をおこないます。
調達活動を通じて知り得た機密情報は、お取引先の承諾なしに第三者に開示いたしません。
パートナーシップ構築宣言
当社は、サプライチェーンのお取引先の皆さまや価値創造を図る事業者の皆さまとの連携・共存共栄を進めることで、新たなパートナーシップを構築するため、以下の項目に重点的に取り組むことを宣言します。
- サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列等を超えた新たな連携
- 「振興基準」の遵守
- その他
サプライチェーンのお取引先の皆さまや価値創造を図る事業者の皆さまとの連携・共存共栄を進めることで、新たなパートナーシップを構築するため、以下の項目に重点的に取り組むことを宣言します。
サプライチェーンのお取引先の皆さまや価値創造を図る事業者の皆さまとの連携・共存共栄を進めることで、新たなパートナーシップを構築するため、以下の項目に重点的に取り組むことを宣言します。
(1)価格決定方法
不合理な原価低減要請を行いません。取引対価の決定に当たっては、下請事業者と少なくとも年1回以上の協議を行うとともに、下請事業者の適正な利益を含み、下請事業者における労働条件の改善が可能となるよう、十分に協議して決定します。その際、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」に掲げられた行動を適切にとった上で決定します。具体的には、取引価格等、取引に関してお取引先の皆さまと対話を行うコミュニケーション推進月間(9月)を設定し、お取引先の皆さまからのご意見・ご要望を踏まえて取引価格を協議します。また、原材料費やエネルギーコストの高騰があった場合には、適切なコスト増加分の全額転嫁を目指します。なお、取引対価の決定を含め契約に当たっては、親事業者は契約条件の書面等による明示・交付を行います。
(2)手形などの支払条件
下請代金は可能な限り現金で支払います。手形で支払う場合には、割引料等を下請事業者の負担とせず、また、支払サイトを60日以内とするよう努めます。
(3)知的財産・ノウハウ
「知的財産取引に関するガイドライン」に掲げられている「基本的な考え方」や、「契約書ひな形」を踏まえて取引を行い、片務的な秘密保持契約の締結、取引上の立場を利用したノウハウの開示や知的財産権の無償譲渡などは求めません。
(4)働き方改革等に伴うしわ寄せ
お取引先も働き方改革に対応できるよう、下請事業者に対して、適正なコスト負担を伴わない短納期発注や急な仕様変更を行いません。災害時等においては、下請事業者に取引上一方的な負担を押し付けないように、また、事業再開時等には、できる限り取引関係の継続等に配慮します。
「トーエネックグループ調達基本方針」に基づき、相互発展を目指す大切なパートナーであるお取引先とともに、コンプライアンスの徹底、安全確保、環境負荷の軽減等、CSRに配慮した調達活動に取り組みます。
マルチステークホルダー方針
当社は、企業経営において、株主にとどまらず、従業員、お取引先、お客さま、地域の皆さまをはじめとする多様なステークホルダーとの価値協創が重要となっていることを踏まえ、マルチステークホルダーとの適切な協働に取り組んでまいります。その上で、価値協創や生産性向上によって生み出された収益・成果について、マルチステークホルダーへの適切な分配を行うことが、賃金引上げのモメンタムの維持や経済の持続的発展につながるという観点から、従業員への還元やお取引先への配慮が重要であることを踏まえ、以下の取り組みを進めます。
- 従業員への還元
- 取引先への配慮
- その他のステークホルダーに関する取組
当社の原動力であり、成長の源泉は人材です。社会に安心とやさしい環境をお届けするために、教育訓練等を更に拡充し、人材の質と量の充実を図っていきます。また、多様な人材が、健康で安全にいきいきと働けるよう従業員エンゲージメントを高める施策を積極的に推進していくことで、持続的な成長と生産性向上に取り組み、付加価値の最大化に注力します。その上で、生み出した収益・成果に基づいて、「賃金決定の大原則」に則り、自社の状況を踏まえた適切な時期と方法により、賃金の引上げを含む処遇改善や諸制度の改正を実施し、従業員への持続的な還元を目指します。
(個別項目)
具体的には、賃金の引き上げについては、経済情勢や物価の動向、当社の経営状況を踏まえ、労使間の対話に取り組みます。また、教育訓練等については、トーエネックグループ人材戦略方針のもと、研修制度の充実、資格取得の支援、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進などを行うとともに、エンゲージメントサーベイの実施やその結果に基づく継続的な改善に取り組みます。
当社はパートナーシップ構築宣言の内容遵守に、引き続き、取り組みます。
なお、パートナーシップ構築宣言の掲載が取りやめとなった場合、マルチステークホルダー方針の公表を自主的に取り下げます。
当社は、中部電力グループCSR宣言に基づきエネルギーに関するあらゆるニーズにお応えし、成長し続ける企業グループとして、それぞれの個性を生かしながらエネルギーを基軸とした事業に総合力を発揮し、安全を最優先に安定供給を果たすとともに地球環境の保全に努め、持続可能な社会の発展に貢献します。
事業運営にあたっては、国内外の法令・ルールを守り、企業倫理を重んじて公正・誠実に行動します。
事業活動に関わる全ての方々との相互コミュニケーションを重視し、透明性の高い開かれた企業活動を推進します。
これらの項目について、取組状況の確認を行いつつ、着実な取り組みを進めてまいります。
コンプライアンス
法務体制の拡充
平成28(2016)年7月、コンプライアンスの遵守や経営判断・意思決定の迅速化等を目的に行われた組織改定において、法務室が法務部に改称されるとともに、法務グループが新設された。
その後、令和元年には、法務業務の業務量増加・高度化および現場ニーズ対応の実効性向上を目的に、新たにコンプライアンスグループが設置された。法令遵守・企業倫理の推進を担うとともに、従来取り組んできた組織風土の醸成・改革にも一層注力していくこととなった。
組織風土の醸成・改革
平成20年代前半、「工事用資材の架空発注」「技術者資格の不正取得」等の不適切な事象が相次いで発覚したことから、専門家によるコンプライアンス外部診断(27年)等を踏まえ、さまざまな施策を展開した。
コンプライアンスメイトおよびメイトリーダーの新設もその一環であり、各職場における小集団によるディスカッション等を通じて、日々コンプライアンスを意識する機会を設け、各従業員の自覚を促す活動として定着を図っている。
また、コンプライアンス・メッセージの発信や宣言の実施(次項参照)により、経営層・上位者の率先垂範と従業員一人ひとりの意識・心構えの醸成を図っている。
加えて、令和3(2021)年以降、ハラスメント防止の社会的な潮流を踏まえ、全社を挙げてパワーハラスメントの根絶に注力するなか、人事部はじめ関係部署と連携を図りながら、アンガーマネジメント教育の全事業場での開催等を通じて、特に指導する側の姿勢・意識の改革等に取り組んだ。
コンプライアンス・メッセージの発信およびコンプライアンス宣言の実施
令和元(2019)年7月、コンプライアンス推進委員会委員長である大野社長が、お客さまや社会からの信頼を何よりも大切なものとして、コンプライアンス・メッセージを発信した。以降毎年、委員長(社長)がメッセージを発信し、それを受け、本部長・統括、コンプライアンス責任者、コンプライアンスリーダーもメッセージを発信するとともに、従業員一人ひとりがコンプライアンス宣言を行っている。
法務総括者の設置
令和元(2019)年8月、各部門・部署に法務総括者を置き、法務部と連携して業務運営上の法的リスクの解消・低減を図る体制を構築した。
事業継続に向けた取り組み
事業継続計画(BCP)の手引きの制定
平成28(2016)年6月「事業継続計画(BCP)の手引き」を制定し、7月1日より運用を開始することとした。
大規模地震などの非常災害時における応急対策および復旧に関する組織運営の具体策は、24年に改正または策定した「非常災害対策要領」と「当社事業継続計画(BCP)策定に伴う具体的取り組み事項の検討および報告について(依頼)」を基に行うこととしてきた。しかし、東海地震・東南海地震・南海地震の被害想定は24年以降変化し続けたため、運用の見直しを行った。
また、地球温暖化防止の観点から、令和4年から備蓄食料更新に伴ってフードバンク団体などへの備蓄食料の提供を開始し、食品ロス削減に取り組んだ。
各営業所の整備
平成26(2014)年5月に尾鷲営業所が完成し、7月から営業を開始した。同営業所はBCPの観点から海抜の高い場所への移転であった。
30年2月には岐阜北営業所が完成し、竣工式を実施した。同営業所は岐阜市から本巣市へ移転し、4月から営業を開始した。
令和2年2月、リニューアルした志摩営業所が完成し、3月から営業を開始した。続いて4月には伊勢営業所が完成した。5月から営業を開始した同営業所は、災害復旧拠点としての機能も有した。
3年10月には桑名営業所の移転に伴って新社屋が完成した。災害時の復旧拠点としての機能向上や、配電線工事の施工能力向上を目指し移転した同営業所は12月から営業を開始した。
4年1月、リニューアルした多治見営業所が完成し、3月から営業を開始した。5月には沼津営業所が三島市に移転し、三島営業所と名称を変えて営業を開始した。



本店本館ビルの建て替えを決定
令和4(2022)年3月、当社は本店本館と本店別館を統合し、(仮称)新本店ビルとして建て替えることを決定した。6年度に着工し、10年度に竣工、11年度に移転を行う予定とした。
当社はインフラを支える企業として早期災害復旧体制を整備しているが、大規模自然災害に対応し、さらなる事業継続計画(BCP)強化を図るため、建て替えを決断した。また、これまで別々の場所で事業運営を行っていた本館と別館を集約し、さらなる効率化を目指すことも目的の一つであった。
新本店のコンセプトは「BCP対策、感染症対策を強化した災害などに強い建物」「カーボンニュートラルを目指した環境性能に優れた建物」「働きやすい快適な職場環境を実現する建物」とし、当社独自のエネルギーマネジメントシステムToEMSを導入する予定である。また、環境性能の高いビルとしてZEB Ready(エネルギーを自ら創出し、省エネルギー率50%以上の建物)の取得を目指している。
なお、新本店ビルが完成するまでは、本店本館の至近地に本店洲崎ビルを建設し、労働組合、健康保険組合を含む本館内の各部署を移転することとした。5年4月に着工、6年9月末に竣工、同年12月に移転を行う予定である。工事に先立ち、5年3月には安全祈願祭を執り行った。


